「発泡吸い込み一本針仕掛け」の蛇足的愚見 

東北支部   笠 岡  庸 志

 会報281(05’1月号)に高橋富士夫会員が、「発泡吸い込み一本針」について紹介記事を寄せられ、多くの会員が大いなる興味と関心をもった。
また、同会員の大鯉研究所ホームページの釣果速報では、この仕掛けによる驚くような釣果がいつも掲載されて、人々の目を引いていた。
ある会員から「記事を読んで、多分こんな仕掛けだろうと想像してみたものの、はっきりしたイメージが湧かない。実物を見てみたい。」との声が私に届いた。私自身、実物を見たことがなく具体的な説明も出来ない。
 近く、新年会があるのでその席上で実物を呈示し、参考に資するのが一番だと思い、厚かましくも高橋さんにサンプル送付を依頼したところ快く承諾され、仕掛け1組が送られてきた。実物を見ての私の所感は次のようなものであった。
 なお、後日この所見について高橋さんに確認したところ、ある項目については私の所見と異なる意見が寄せられた。わが未熟な判断を恥じながら、注記して紹介することにした。

<発泡吸い込み仕掛け>

1.仕掛け外観全般
いわゆる「喰わせ一本針仕掛け」そのものであり、シンプルでハリに発泡材を取り付けた以外「発泡吸い込用」の特殊性を示すものはなにもない。
吸水性のない白色発泡スチロールを約5mm角、長さ6~7mmにカットしたものが通し刺しでハリの軸につけられている。
(ハリがソイ18号のためか2個。位置は腰とチモトの中間部?) 

2. 発泡材の効果
(1) 浮力
仕掛けをそのまま水の中に入れてみた。ハリは水底に横たわったままだ。
底を切って、ある程度浮くものと思っていた私には予想外の結果だ。
水槽に手を入れハリを取ろうとしたら、水の動きにあわせハリが僅かに動いたように見えた。
ハリをポップアップ状にするのではなく、鯉がバラケた餌を吸い込むと同時に抵抗なくスムーズに口に入ることを狙った浮力なのだ。なまじ、バラケエサの付近でブラブラ浮いているより自然に吸い込ませるためなのだろう。当然、ハリの重さに対し、バランスのとれた浮力の検討が重要なのだ。
: 高橋さんの意見
疑似餌的効果をねらうのでなく、あくまで吸い込みとして、獲物に針を意識させないのが理想。出来れば中空の針究極的理想である。
(2)
サンプルには白色の発泡スチロールが用いられている。これにはすぐに合点がいった。 鯉釣りの食わせエサは、生きエサや匂いは別にして、白色あるいは淡色系のエサが効果をあげているようだ。パン、大豆、いも羊羹、干しいも、コーン等々がそうだが、同じ種類でも黒糖入りの黒パン、枝豆・えんどう豆、練り羊羹、真っ黒になった手作り芋、変色した芋羊羹、紫コーン等は一般的に効果が薄いようだ。また、多摩川の鯉釣り用フライは、白色のスポンジ、フェルト、シルク等が絶対的で、スレてくると黄色、ピンク、オレンジなど明度の高い色も使うそうだ。視力の弱い鯉に興味をもたせるには白色系が適しているのだろう。
: 高橋さんの意見
擬餌針的効果を期待していないので、色にこだわってはいない。むしろ目立たないものが望ましい。

(3) 材質
発泡スチロールといってもいろいろあるらしい。密度がこまく吸水性のないものが目的に合致する。吸水性のあるものに「鯉にこれだ」を染み込ませてはどうかという意見もあるかもしれないが、これは「発泡吸い込み」
とは全く異なる疑似餌釣法になる。

3. .ハリス長
サンプルのハリスは10cm。これはハリを直接こませて覆うやりかたの長さだろう。高橋さんは仕掛けの種類としてこのほかに《ハリスの途中にラセンやボタンを付けてコマセを留める》、《袋仕掛けを使用する》と説明されている。釣り人各自が状況を判断し選択すべきことであろう。
4.   オモリ
サンプルはスパイクオモリ25号のため、吊り下げ式で取り付けていたが中通し遊動でも仕掛けの効果に影響することはないと思う。
注 高橋さんの意見
 吸い込みだんごはスパイクオモリを包む形で装着するのが楽。

普通のオモリよりスパイクオモリの方がドーナッツ形状とスパイク によりダンゴを保持する効果が高い。
5. ハリ
発泡スチロールを取り付けるには、短軸ハリより長軸ハリがバランス上有利であろう。また、太軸はそれなりに重量があるので、強度があれば細軸の方が発泡材を付けやすいのでは・・。二本バリも考えられるが、一本が遊びバリになり思わぬ失敗を招く要因になる。「吸い込み一本針」こそ、この仕掛けの最大特性なのだ。

漠然と以上のようなことを考え、新年会で臆面もなくサンプルを呈示説明したのだが・・・。高橋さんの開発思考とかけ離れた部分もあったので、どれほど理解してもらえたかは疑問である。ただ、興味と関心をもつてあちこちで討議されていたので、何らかの成果があったのではなかろうかと少しホッとしている。 食わせ式では、食わせエサか針掛りを邪魔し、浅掛り等でのバラシが多い。多数針の吸い込み式は魚の掛かりはいいのだが障害にも掛かりやすい。
この仕掛けはそれらを解決し、さらに空バリとしての効果を高める仕掛けだと思う。一度試されてはいかが。
ただ単なる模倣ではなく、会報281号の記事から高橋さんの思考過程を分析し、いろいろな角度から検討を加え、試行錯誤を繰り返しながら、自分のものにしたときの喜びは大きい筈である。


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